橋本多佳子句集「紅絲」 沼 Ⅰ
沼
水鳥の沼が曇りて吾くもる
沼氷らむとするに波風たちどほし
頭(づ)勝ちなる鳩の身すぐにくつがへる
家近き沼に死にし男女を悼みて 三句
凍(い)て死にし髪吾と同じ女の髪
金色の焚火一炷二人の死
置かれある情死の天の寒き晴れ
[やぶちゃん注:二句目の「一炷」は「いつしゆ(いっしゅ)」と読み、一般には香をひと炷(た)きくゆらせること及びまたその香、又は一本の灯心を指すが、ここは情死の現場検証であろうか、そこでたく焚火の火を手向けの香や灯心に擬えたものであろうか。但しこの三句、あまり上手くは詠めていない。素材負けしている。]
置かれある情死の天の寒き晴れ
« 杉田久女句集 225 江津湖の日 十一句 | トップページ | 今日のシンクロニティ「奥の細道」の旅9 黑羽光明寺行者堂 夏山に足駄を拜む首途哉 芭蕉 »