杉田久女句集 224 櫓山山莊虛子先生來遊句會 四句
櫓山山莊虛子先生來遊句會 四句
潮干人を松に佇み見下せり
花石蕗の今日の句會に缺けし君
[やぶちゃん注:「缺けし君」底本では「缺」は「欠」。]
秋山に映りて消えし花火かな
石の間に生えて小さし葉雞頭
[やぶちゃん注:「雞」は底本の用字。これは大正一一(一九二二)年十月に長崎に西下する高浜虚子を迎えた、橋本多佳子豊次郎夫妻の櫓山荘での句会風景である。実際には既にこの年の三月二十五日に同じ櫓山荘で虚子は長崎旅行の帰途に句会を開いている(底本と同じ立風書房一九八九年刊の「橋本多佳子全集」の多佳子年譜による)。この時、久女の年譜によれば橋本夫妻は句会を見学とあり句会自体には参加していない。従って私は二句目にある「缺けし君」と久女が愛おしんでいるのは、実は多佳子であると思うのである。この後より久女は本格的な久女の句作指導(絵も描かされたと多佳子の言を載す)を受けるようになる。底本の久女の年譜には虚子来訪三月の記事がなく、逆に多佳子の年譜にはこの十月の虚子再訪の記事がない。何か、奇妙である。]
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