篠原鳳作初期作品(昭和五(一九三〇)年~昭和六(一九三一)年) ⅩⅣ
揚雲雀風強ければ流れつつ
まなかひに逆落しくる雲雀哉
南風や出船を送る遊女達
大いなる守宮の聲や蚊火の宿
炎天や女も馬にうちまたぎ
薊咲く古墳の春は闌けにけり
奥津城に歩とのあふれて鷄合せ
熔岩(イワ)山に囀る鳥の名を知らず
慈善鍋三井銀行の扉の前に
鬪鷄の人輪に佇てば酒の香が
鬪鷄やしめし合せの檳榔林
鬪鷄の人輪の中の娼婦かな
鷄合せ古墳の庭に始めけり
薊咲く古墳の春はたけにけり