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2014/05/07

生きる先々   山之口貘

 生きる先々

 

僕には是非とも詩が要るのだ

かなしくなっても詩が要るし

さびしいときなど詩がないと

よけいにさびしくなるばかりだ

僕はいつでも詩が要るのだ

ひもじいときにも詩を書いたし

結婚したかったあのときにも

結婚したいという詩があった

結婚してからもいくつかの結婚に関する詩が出来た

おもえばこれも詩人の生活だ

ぼくの生きる先々には

詩の要るようなことばっかりで

女房までがそこにいて

すっかり詩の味をおぼえたのか

このごろは酸っぱいものなどをこのんでたべたりして

僕にひとつの詩をねだるのだ

子供が出来たらまたひとつ

子供の出来た詩をひとつ

 

[やぶちゃん注:【2014年7月22日追記:思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証済。注を一部削除・追加した。】初出は昭和一六(一九四一)年新年号『日本評論』(発行所は東京市京橋区の日本評論社)。前の詩にも注したが、発表時はバクさんは三十八歳。結婚四年目、この六月に長男重也君が生まれている。

   *


 生きる先々


僕には是非とも詩が要るのだ

かなしくなっても詩が要るし

さびしいときなど詩がないと

よけいにさびしくなるばかりだ

僕はいつでも詩が要るのだ

ひもじいときにも詩を書いたし

結婚したかったあのときにも

結婚したいという詩があった

結婚してからもいくつかの結婚に關する詩が出來た

おもえばこれも詩人の生活だ

ぼくの生きる先々には

詩の要るようなことばっかりで

女房までがそこにいて

すっかり詩の味をおぼえたのか

このごろは酸っぱいものなどをこのんでたべたりして

僕にひとつの詩をねだるのだ

子供が出來たらまたひとつ

子供の出來た詩をひとつ


   *]

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