橋本多佳子句集「信濃」 昭和二十一年 Ⅺ
蜂の巣にめつきり朝は秋日ざし
ひぐらしのしぶけるごとく湖(うみ)暮るる
[やぶちゃん注:野尻湖か。]
夜の障子木犀の香のとどこほる
われに來る木犀の香をひとよぎり
木犀のにほひの中に忌日來る
[やぶちゃん注:夫豊次郎(昭和一二(一九三七)年逝去)の祥月命日である九月三十日であろう。この昭和二一(一九四六)年のそれは十回忌に当たっていた。]
みじろげば木犀の香のたちのぼる
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