篠原鳳作初期作品(昭和五(一九三〇)年~昭和六(一九三一)年) ⅩⅦ
風波の麥生進むが如くなり
ほとばしる枝の眞靑や立穗梅
[やぶちゃん注:「立穗梅」穂立ちという語があり、これは稲の穂が出ることを指すから、丁度その八月上旬頃の梅木立という謂いか。]
大兵でおはし給ふなる寢釋迦哉
舊正や屋敷屋敷の花樗
芝山やそこここ立てる霜圍ひ
海苔採女はだしのままの家路哉
[やぶちゃん注:「海苔採女」は「のりとりめ」と読んでいよう。]
海苔採りに沖つ白波たちそめぬ
海苔採りにあきし心や遠霞
醉ざめの面て伏せゐる火桶哉
霜圍ひ覗き覗きて園巡り
水涕のすすりあへなくなりにけり
破(ヤ)れ障子兒澤山と見えにける
鏝入れしままの火桶に招じけり
寒卵溜るばかりに貰ひけり(微恙)
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