飯田蛇笏 靈芝 昭和十年(九十九句) Ⅳ
四月三日朝、墨石君の案内にて南北君と共
にサンルイス丸へ遊びにゆく
鳶鷗帆も吹きかすむ港かな
[やぶちゃん注:「墨石」「南北」ともに門弟らしいが、不詳。「サンルイス丸」個人ブログ「座敷牢」の「ガタルカナル戦日本海軍石油事情(昭和17年度油送船別南方還送油なぜか捕獲オランダ油送船一覧付き)」という記事のデータの中に『到着日時及び入港地 8月6日 大連(満州石油)/船名 サンルイス丸/積載油内容 揮発油及び原油 約12,200』という記事を見出したのみ。どこの港なのかも不明である(感触としては次の二句から淡路島の福良港かも知れない。二句後の「福良港」の注を参照されたい)。二人の人物とともに識者の御教授を乞うものである。]
洲本金天閣にて
餘花の峯うす雲城に通ひけり
[やぶちゃん注:Yoshiyuki Nakayama 氏のサイト「スバルワールド」の「すばる“旅”レポート」の「淡路人形浄瑠璃と潮風香る島の城下町・洲本を訪ねる」に「洲本八幡神社(金天閣)」があり、そこに『三熊山北麓の洲本八幡神社に藩主の迎賓館として建てられたものを、明治維新後、城外に移築。大正時代に洲本八幡神社内に移設され』、現在は『県指定の重要有形文化財で、内部の装飾金具や欄間の彫刻には、江戸工芸技術の粋がつくされ』、『建物の各所に見られる卍の印は蜂須賀家の家紋で』あるとある。『三熊山北麓の洲本八幡神社』は淡路島の、現在の洲本市小路谷(おろだに)にある洲本城(別名三熊城)の麓にある、地図上では「上八幡神社」とあるそれと思われる。]
福良港
かもめ飛ぶ觀潮の帆の遲日かな
[やぶちゃん注:「福良港」鳴門海峡に面した淡路島の南端、兵庫県南あわじ市にある港。天然の良港で、かつて大鳴門橋の開通以前は徳島県鳴門市の撫養港との間に鳴門フェリーがあり、四国と阪神を結ぶトラック輸送の動脈を担っていた時期もあったが、現在では鳴門の渦潮を見る遊覧船(観潮船)の発着港として多くの観光客に利用されている。その他にもかなり大型の船が出入り出来る貨物港と漁港としての機能もあるとウィキの「福良港」にある。先の停泊していたサンルイス丸に乗船してみたのもここかも知れない。]
四月十八日、鴻翔君と共に國寶展に赴き南
蠻屛風其他長崎風俗の古名畫を見る。三句
寺院(エケレシヤ)の實る寒竹巖に垂る
伴天連が蠑螺をのぞく頸の珠數
殉教者(マルチリ)に天國(ハライソ)さむき露のいろ
官邸の薄暑をいづる花賣女
楫ン取に大つぶてなる初夏の雨
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