杉田久女句集 245 花衣 ⅩⅢ
紅苺垣根してより摘む子來ず
牡丹芥子あせ落つ瓣は地に敷けり
凌霄花(のうぜん)の朱に散り浮く草むらに
[やぶちゃん注:「凌霄花」シソ目ノウゼンカズラ科タチノウゼン連ノウゼンカズラ
Campsis grandiflora 。参照したウィキの「ノウゼンカズラ」によれば、「凌霄花」のほか、「紫葳」とも書く。『夏から秋にかけ橙色あるいは赤色の大きな美しい花をつける、つる性の落葉樹。気根を出して樹木や壁などの他物に付着してつるを延ばす。花冠は漏斗状。結実はまれである。中国原産で、平安時代に渡来したといわれる』。『ノウゼンというのは凌霄の字音によるといわれる。古くはノウセウカズラと読まれ、これがなまってノウゼンカズラとなった。霄は「空」「雲」の意味があり、空に向かって高く咲く花の姿を表している。夏の暑い時期は花木が少なく、枝を延ばした樹木全体に、ハッとするような鮮やかな色の花を付け、日に日に咲き変るので、よく目立つ。花の形がラッパに似ていることから英語では』“Chinese trumpet vine”『「トランペット・フラワー」、「トランペット・ヴァイン」あるいは「トランペット・クリーパー」と呼ばれる』とある(“vine”と“creeper”は孰れも蔓(つる)・蔓性植物の意)。グーグル画像検索「ノウゼンカヅラ」はこちら。]
流れ去る雲のゆくえや靑芭蕉
晴天に廣葉をあほつ芭蕉かな
夕顏や遂に無月の雨の音
かへり見ぬ葡萄の蔓も花芽ぐむ
霖雨や泰山木の花墮ちず
[やぶちゃん注:「霖雨」は音は「りんう」であるが、ここは訓じて何日も降りつづく「ながあめ」である。]
活け終へて百合影すめる襖かな
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