飯田蛇笏 靈芝 昭和十一年(百七十八句) Ⅷ
綠金の羽を牝にかけて秋の雞
雲あそぶ後山の蘭に秋の雞
秋の軍雞激することなく貌翳る
よき娘きて軍雞流※(ながしめ)す秋日かな
[やぶちゃん注:「※」=「目」+「焉」。この漢字、不詳。]
句選なかばにして隅々廬をたちいで、鬱積
せる心を前庭の花卉に遊ばす、二句。
萩紫苑瑠璃空遠く離れけり
秋空や子をかずつれし鳶の笛
晩秋や杣のあめ牛薔薇甜ぶる
[やぶちゃん注:「あめ牛」飴牛で飴色の牛の謂いであろう。「甜ぶる」は「ねぶる」で舐めるの意。]
樅に出て深山ぐもりの月の秋
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