橋本多佳子句集「紅絲」 雉
雉
絵雛かけし壁をそのまゝくらがりに
恋猫のかへる野の星沼の星
よこざまに恋奪ひ尾の長き猫
百姓の不機嫌にして桃咲けり
桃畑恋過ぎし猫あまたゐて
花折つて少女椿より降りしばかり
[やぶちゃん注:これはもう、西東三鬼の昭和一一(一九三六)年の問題作、
白馬を少女瀆れて下りにけり
への多佳子の少し辛めの返歌である。]
啓蟄の土の汚れやすきを掃く
木瓜紅く田舎の午後のつゞくなる
伊地知清重態の報来る
嘆かじと土掘る蜂を見てゐたり
[やぶちゃん注:「伊地知清」不詳。]
雉啼くや堪へゐし涙奔りいで
雉啼くや胸ふかきより息一筋
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