杉田久女句集 237 花衣 Ⅴ 炊き上げてうすき綠や嫁菜飯
炊き上げてうすき綠や嫁菜飯
[やぶちゃん注:「嫁菜」一応、ルビもないので「よめなめし」と読んでおくが、私は実は「うはぎめし」と読みたい。キク亜綱キク目キク科キク亜科シオン属ヨメナ
Aster yomena は若芽を摘んで食べるがこれはまさに万葉の昔からの習慣で、古くは「おはぎ」「うはぎ」と読んだ。「万葉集」巻第十の一八七九番歌に、
春日野に煙立つ見ゆ少女らし春野のうはぎ採みて煮らしも
同巻第二に載る柿本人麿の二二一番歌(二二〇番の長歌の反歌)にも、
妻もあらば摘みてたげまし佐美(さみ)の山野の上(へ)のうはぎ過ぎにけらずや
とある(「食(た)ぐ」は飲食することをいう古代の動詞)。久女は俳句の世界だけでなく、生活に於いても古えの季節を大切にする女性であったのである。]
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