飯田蛇笏 靈芝 昭和十一年(百七十八句) Ⅰ
昭和十一年(百七十八句)
雲しきて山廬の注連井年迎ふ
[やぶちゃん注:「注連井」新年の注連飾りを廻した井戸のことであろう。]
花温室の年立つ雨もふりやみぬ
初富士や投錨す湾風吹かず
繭玉に燈明の炎を感じけり
靑猫をめでて聖書を讀み初む
讀初や錦古れども湖月抄
巫女のみごもりてより春の闇
[やぶちゃん注:「巫女」は「かんなぎ」。]
闇ふかきみなとの春の淸教徒
帆をたえて港路の雨温くき春
奉教の献花たづさへ温くき春
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