飯田蛇笏 靈芝 昭和十一年(百七十八句) Ⅹ
杜藻君來訪、大谷山に訪づ
折りとりて君に嗅がする枯荏かな
[やぶちゃん注:「杜藻君」ホトトギス派の俳人京極杜藻(とそう 明治二七(一八九四)年~昭和六〇(一九八五)年)。元京極運輸商事会長。本名は友助。「大谷山」不詳。蛇笏のいた現在の山梨県南巨摩郡南部町万沢境川の近くでないとおかしいが山名・山号ともに発見出来ない。識者の御教授を乞う。「枯荏」は「かれえ」で「荏」はシソ目シソ科シソ属エゴマ変種エゴマ
Perilla frutescens var. frutescens 。]
春蘭は實の枯れ枯れに靈芝生ふ
靈芝とる童に雲ふかき甌窶かな
[やぶちゃん注:両句が本句集の標題句。「甌窶」既注。先の「春鹿を射て舁きいでし甌窶かな」に『注。甌窶は山の高処にして傾斜せる地を云ふ。』とあり、そこで私は『「甌窶」は「おうる」と読ませているらしい。諸注は高台の狭い土地とする。「甌」は原義が小さな平たい鉢、「窶」は小さな塚や岡を指す。通常は「おうろう」であるが、小丘の謂いの場合、「ル」という音を持っている。』と注した。]
くさ飼えば夜寒の老馬ゑまひけり
除夜の鐘龕の一炷睡りけり
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