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2014/06/26

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十三章 アイヌ 2 小樽から札幌へ コンブ漁を見る

 

M367

図―367

 

 

M368

図―368

 七月二十九日に、我々は小樽を立って札幌へ向かった。我々が小樽で集めた標本は大きな酒樽に詰めた。標本というのは、大きな帆立貝の殻百個、曳網で採集した材料を酒精(アルコール)漬にした大きな石油鑵一個、貝塚からひろった古代陶器その他である。馬は宿屋の前まで引いて来られた。洋式の鞍をつけた二頭は、矢田部教授と私の為であり、他には荷物用の鞍がついていたので、毛布を沢山、詰絮(つめわた)として使用する必要があった。我々の荷物は、大型の柳行李二個であった。供廻の馬子は別に乗馬を持っていたが、佐々木氏と下男とは歩く方がいいといった。日本人にとっては、三十マイルは何でもないのである。車も、人力車もないので、我々は札幌から先は、蝦夷を横断するのに、百五十マイルを馬に乗るか、歩くかしなくてはならぬ。毎日変った馬――而もそのある物は荒々しい野獣である――にのって、悪い路を、百五十マイルも行くことを考えた時、札幌から蝦夷の東海岸に至る道路は、割合によいとは聞いていたが、私はいささか不安にならざるを得なかった。私が生れてから一度も馬に乗ったことが無いというのは、不思議だが事実である。腕を折ったり、頭を割ったりした友人の思出や、鐙(あぶみ)に足がひっからまった儘引きずられて死んだ人達の話が、恐怖の念を伴って私を悩した。然し私は馬に乗ることになっていたのだし、歩く時間はなし、よしんば落ちて頭を割った所で、私はそれを天意として神様を不敬虔に非難したりせず、私自身の教育に欠けた点があった結果と見ることにしよう。とにかく、土着民の面前で、醜態を演ずることを余り望まぬ私は、町の出口まで馬を曳かせ、私自身は歩いた。所が非常に気持がよいので、四マイルか五マイル歩き続け、そこで初めて小馬にまたがった。道路は十マイルの間、海に沿うていた。崖にトンネルをあけた所が二ケ所あった。図367はその一つから小樽を見た景色である。新鮮な空気が海から吹きつけ、そして波は彼等の「永遠に続く頌歌」を歌った。岸を離れた漁夫達は、海藻を集めるのに忙しかった。それは大きなラミナリアで、乾燥して、俵にして支那へ輸出する。漁夫達は長さ十フィートの棒のさきについた、一種のフォークで、棒の一端に横木のついた物を使用する。この棒を海藻の茂った場所につっ込み、数回くるくる廻し、海藻を繋留場から引きはなす様な具合に、からみつける(図368)。

[やぶちゃん注:ちょっと意外であるが、モースはこの時生まれて初めて馬に乗ったのであった(後の段でその実際が語れる)。モースの内心の恐怖がよく伝わってくる面白い記述である。回想記録であるここでは半ば冗談交じりの余裕で述べているが、どうしてその時は、結構、真剣に恐懼していたものと思われる。矢田部日誌によれば、これは明治一一(一八七八)年七月二十九日で、午前七時半に小樽を出発、東南へ十五キロメートル程海岸線を行った石狩湾の最南奥の銭函(ぜにばこ)へ午前十一前に着いたが、そこに札幌から手配された馬二頭が待っていた。十二時頃に銭函を出発、午後四時前には札幌へ着いたとある。

「三十マイル」約四八・三キロメートル。これは小樽―札幌間の距離。直線でも三三キロメートルある。

「百五十マイル」二四一・四キロメートル。以降の彼らの行程を現在の地図上で実測して見ると、この小樽から札幌を経て室蘭までが概測で一五七キロメートル、そこでモースは小蒸気船で内浦湾の湾口を森へと向かい(直線距離で約四一・三キロメートル)、そこから函館までが約四三キロメートル、計二四一・三キロメートルとなり、ぴったり一致する。

「四マイルか五マイル」六・五~八・一キロメートル。

「十マイル」約一六・一キロメートル。

『「永遠に続く頌歌」』原文は“"everlasting anthem."”。

「ラミナリア」(原文は“Laminaria”)直下に石川氏の『〔昆布〕』という割注が入る。“Laminaria”は不等毛植物門褐藻綱コンブ目コンブ科 Laminariaceae に属するコンブの中でもコンブ(ゴヘイコンブ)属 Laminaria を指す種名である。しかし、ウィキの「コンブ」を見ると、我々が、普段、食する馴染みのコンブ類は以下を記載する。

 マコンブ(真昆布)Saccharina japonica

 オニコンブ(羅臼昆布)Saccharina diabolica

 リシリコンブ(利尻昆布)Saccharina ochotensis

 ホソメコンブ(細目昆布)Saccharina religiosa

 ミツイシコンブ(三石昆布=日高昆布)Saccharina angustata

 ナガコンブ(長昆布=浜中昆布)Saccharina longissima

 ガッガラコンブ(厚葉昆布)Saccharina coriacea

 ネコアシコンブ(猫足昆布) Arthrothamnus bifidus

 ガゴメコンブ(籠目昆布)Saccharina sculpera

    (シノニム:Saccharina crassifolia, Kjellmaniella crassifolia

ところが、別なコンブの学術論文をみると、これら上記の馴染みのコンブ類の学名をすべて Laminaria とするものを見出す(例えば川井唯・四ツ倉典滋氏の共同論文北海道産コンブ属植物の系統分類の現状リシリコンブを中心に(PDF・二〇〇五年三月発行『利尻研究』所収)。マコンブは Laminaria japonica と記載する)。ウィキもよく見ると、孰れにもコンブ属という和名を併記してあり、この辺の分類は確定していないことが分かる。なお、この属名 Saccharina (サッカリナ)はサッカリンと同じで、「砂糖」の意のラテン語“saccharum”由来で、コンブのグルタミンの持つ甘みに由来するものであろうかと思われる。

「長さ十フィートの棒のさきについた、一種のフォーク」「十フィート」は約3メートル。これは北海道水産業改良普及職員協議会編になるサイト「北海道の漁業図鑑」の漁業マコンブ)にある「マッカ」、若しくは漁業(ナガコンブ)」にある「かぎ(鈎)」又はより深い所に用いる「ねじり(かたしば)」或いは漁業(ミツイシコンブ)」にある「カギ棹」又はより深い所に用いる「ネジリ」と呼ばれる漁具である。モースのスケッチの形状から見ると、渡島のマコンブ漁の「マッカ2」とある漁具写真が非常によく似ている。リンク先の写真を見ているだけでコンブ・フリークの私(かつては常時五種類以上のコンブを用意し、それをそのまましゃぶるのを至福としていたほどのフリークであった)は幸せになってくるのである。]

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