飯田蛇笏 靈芝 昭和十年(九十九句) Ⅸ
巫女の劍佩きたる雪月夜
溪巖に吹きたまりたるあられかな
爐をひらく火の冷え冷えと燃えにけり
[やぶちゃん注:「冷え冷え」の後半は底本では踊り字「〱」。]
狩くらの雲にあらはれ寒の鳶
[やぶちゃん注:「狩くら」は「狩倉」「狩座」「狩競」で狩猟をする場所・狩り場、また単に狩猟、特に鹿狩りを指す古語であるが、ここは前者。]
涙ぐむしなあえかなる雪眼かな
爐邊に把る巫女の鈴鳴りにけり
貧農に小ばなしはずむ圍爐裡かな
新月を搖る波に泣く牡蠣割女
大つぶの寒卵おく繿縷の上
[やぶちゃん注:「繿縷」は襤褸に同じい。]
窻の蔦枯れ枯れに陽も皺みけり
[やぶちゃん注:「枯れ枯れ」の後半は底本では踊り字「〲」。]
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