飯田蛇笏 靈芝 昭和十一年(百七十八句) Ⅱ
厩の神泉の神に寒明けぬ
寒明けし船渠(ドツク)の光り眼を囚ふ
冱返る夜を遊楽の頸飾
大菩薩嶺、一句
野兎ねらう燒け木の鷹に雪解かな
[やぶちゃん注:「ねらう」はママ。]
春殿の風の凶鴉に日の光り
囀りに愛餐の卓はや灯る
春鹿を射て舁きいでし甌窶かな
注。甌窶は山の高処にして傾斜せる地を云ふ。
[やぶちゃん注:「甌窶」は「おうる」と読ませているらしい。諸注は高台の狭い土地とする。「甌」は原義が小さな平たい鉢、「窶」は小さな塚や岡を指す。通常は「おうろう」であるが、小丘の謂いの場合、「ル」という音を持っている。]
草萌や寺院(エケレシヤ)の吊る鸚鵡籠
山桐の大蘖に宿雪盡く
[やぶちゃん注:「大蘖」は「おほひこばえ(おおひこばえ)」と読んでいよう。「宿雪」は「しゆくせつ」としか読めない。残雪のこと。]
山禽に※の蘖日は滿てり
[やぶちゃん注:「※」=「山」+(「棧」-「木」)。この字は音「サン・ザン」で険しい山の形容である。「ざん」と音読みしているか。]
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