橋本多佳子句集「紅絲」 忌月Ⅱ 仏足に一本の曼珠沙華を横たふ
唐招提寺金堂に首なき美しい仏像あり
仏足に一本の曼珠沙華を横たふ
[やぶちゃん注:「首なき美しい仏像」「如来形立像」(にょらいぎょうりゅうぞう)と呼ばれるもの。頭部及び両手・両足首が破損している。実際には元の尊名も分からず、如来に同定する物証があるわけではないが、装飾品をつけていない点から如来と推定されてかく呼称されている。「唐招提寺のトルソー」という異称の方でよく知られる。木心乾漆で漆箔(うるしはく)、像高百五十四センチメートルでほぼ等身大の榧(かや)材製一木造。全体に均整がよくとれており、理想的肉体の表現という点では奈良様式であるが(唐招提寺公式サイトでは奈良時代八世紀とする)、衣文の表現法や大腿部の強調などは平安前期の特徴とされる。参照した『朝日新聞デジタル』「探訪 古き仏たち」の二〇一三年十二月二十一日附沖真治氏の記事によれば、『脚の長い、腰高のスマートな体形だが、大腿(だいたい)部は盛り上がって、がっしりしている。胴体部は、豊満な胸、衣を通して表される膨らんだ腹、引き締まった腰が抑揚に富む。衣のひだ(衣文(えもん))が整然とした波形の曲線を描く。翻波(ほんぱ)式衣文と呼ばれる様式で、腹部、そで、大腿部に浅く、鋭く、洗練された彫り口で刻まれ、リズム感をつくっている』とある。重要文化財。グーグル画像検索「如来形立像」も参照されたい(二〇一四年七月二十九日現在では最上部一列は一つを除いて当該仏像である)。]
« 杉田久女句集 261 花衣 ⅩⅩⅨ 八幡製鐵所起業祭 三句 | トップページ | 飯田蛇笏 山響集 昭和十二(一九三七)年 夏 »