日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十三章 アイヌ 19 石仏
図―407
図―408
モロラン〔室蘭〕に近づくにつれて、土地の隆起の証跡が明瞭に見られた。水に近い崖は、図407に示す如く、数フィートの高さに切り込まれていた。土壌は軽石で出来ているらしく思われたが、これは以前火山性の活動があったことを示している。白老からの長い道中、人家は一軒も見ず、人間の証跡とては、所々に粗末な、荒廃し果てた祠がある丈であった。荒廃はしていても、その前面に花が僅か供えてあるのを見ると、とにかくそれに気をつけている人があることが判る。ざっとした枠構えの下の像は、二個の石から成り立っていて、頭を代表する、より小さい石が、より大きな石の上にのっているに過ぎない。頭には長い糸を両側にたれた、布製の帽子がかぶせてあった(図408)。
[やぶちゃん注:「数フィート」一フィートは三〇・四八センチ。「数」一般に二~三、若しくは五~六の少ない数を漠然と示すもので、それだと、
2~3フィート=60・96~91・44センチメートル
5~6フィート=152・4~182・88センチメートル
となる。ここでは長い方、後者を採りたい(そもそも2~3の方なら、科学者であるモースはその数字を煩を厭わず示すはずだからである)。以後も私は、
数フィート=2メートル弱
と読み替えることとする。因みに孰れも既に注してあるが、しばしば出る「数マイル」(1マイルは約1・6キロメートル)はこの換算では、
数マイル=約3・2~9・6キロメートル
となり、私は常に、
数マイル=10キロ弱
と読み替えることにしている。同様に「数インチ」(1インチは2・54センチメートル)は、
数インチ=約8センチメートル弱から15センチメートル強
というところになるから、私は常に、
数インチ=15センチメートル強
と読み替えてきた。以下、「数インチ」「数フィート」「数マイル」の注は煩瑣なので略すこととする。
「二個の石から成り立っていて、頭を代表する、より小さい石が、より大きな石の上にのっているに過ぎない」風化した地蔵尊のように見受けられる。江戸後期に移植した和人が建立したものであろう。個人サイト「あの頂を越えて」の「北海道の石仏・石塔」によれば『歴史は浅い北海道には道祖神や庚申塚は見かけません。それでもお寺や神社などに石碑や石仏を見付けることができます』として、北海道札幌市中央区伏見の「藻岩山の石仏」の石仏群、北海道札幌市南区簾舞(みすまい)の「空沼岳の龍神地蔵」の写真が見られる。後者の竜神地蔵は特異なものでなかなかよい。]