生物學講話 丘淺次郎 第十一章 雌雄の別 三 局部の別 (1)
三 局部の別
以上述べた通り外形では雌雄の別のわからぬやうな動物でも、腹の内には必ず卵巣か睾丸があつて、何らかの方法によつて卵と精蟲とを出遇はしめる。即ち或る者は體外で受精が行はれ、或る者は雌の體内に精蟲が移し入れられるが、雄が直接に雌の體内に精蟲を入れる場合には、これを確實に行ふために特殊の器官を具へて居る者も少くない。例へば普通の鳥類にはかやうな交接器はないが、「がん」・鴨の如き水鳥類の雄には生殖の出口に肉質の突起があつて、交接する時これを雌の肛門内插し入れる。駝鳥では雄の交接器が特に大きくて長さが三十糎以上もある。かやうな交接器が體外へ突出して居るときには一目してその雄なることが知れるが、平常はこれを體内に收め入れて居るため、外から見ては雌雄の局部の相違が少しもわからぬ。
[やぶちゃん注:『「がん」・鴨の如き水鳥類の雄には生殖の出口に肉質の突起があつて、交接する時これを雌の肛門内插し入れる』鳥類には疎い私はここで初めてそうした事実を知ったが、永く実際のそれを見たことがなかった。今回、科学記事を発信する「ワイアード」で『カモの驚くべきペニス:螺旋型が「爆発」(動画)」』という記事を発見、イェール大学の進化生物学者
Patricia Brennan 氏が、カモの仲間であるバリケン(カモ目カモ科 Cairina 属ノバリケン Cairina moschataの家畜化されたもの。ウィキの「ノバリケン」によれば、バリケンは『食用家禽として日本に持ち込まれたが、あまり普及していない。飛行能力が残っており日本各地で逃げ出したものが散見される』とある)オスが約二十センチメートルのドリル(螺旋)型のペニスを三分の一秒(!)ほどで伸ばしきる瞬間を高速度カメラで記録することに成功したとあり、動画も見られる。
「駝鳥では雄の交接器が特に大きくて長さが三十糎以上もある」なかなか見つからなかったが「Ostrich sex」という画像で確認出来る。なかなかに交尾中の♂の羽と雌雄の首の上下運動が美しい。二十五秒のところで交尾を終わって♂が離れる際に螺旋状のかなり大きなペニスが見える。なお、これらの鳥類の中に稀に存在するペニスはヒトと同じような海綿体組織から成るものの、その勃起は血液ではなくリンパ液によって行われていることが最近分かったようである。]
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