どんづまり 山之口貘
どんづまり
なにしろぼくも
むかしはひとりなので
お金がなければあつちで食ひ
こちで食ひしても間に合はせたが
おもへばぼくも進歩した
おまではお金がないそのうへに
あちらで食ひもことらで食ひも
出来ないぢやないかといふみたいに
女房子供と顔を見合せた
[やぶちゃん注:初出は昭和二五(一九五〇)年十二月号『文藝春秋』。この詩の原稿も「鮪に鰯」編纂用詩篇の束の中にあるので、収録する予定であった可能性がある(実際には採用していない)。
発表の前年七月にバクさんは戦中に疎開したまま住み続けていた妻静江さんの茨城の実家から練馬区貫井町の月田家に転居(間借り)している。発表時は長女泉(ミミコ)さんは六歳であった。]
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