日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十三章 アイヌ 20 室蘭へ
室蘭に着く前の景色は実に目をたのしませた。低い山々、海の入江、長い黄色い浜を持つ室蘭湾は、画の主題としては何よりであろう。図409はこの附近の景色を、ざっと画いたものである。室蘭近くに、面白い形の日本家があった。屋根が並外れて高く、その平な屋梁(むね)には、一面に百合や、鳶尾(いちはつ)や、その他の花が咲いていた。屋根は薄く葺いてあり、軒に近い小屋がけみたいな小屋根には、丸い石がのせてあった【*】。
*『日本の家庭』四一図を見よ。
[やぶちゃん注:私は室蘭に詳しくなく、また明治一一(一八七八)年当時とは海浜部の形状が異なってしまっているため、古写真や現在の画像及びググールのストリート・ビューを見ても、のこの図409が室蘭のどの位置からどっちを向いてスケッチされたものか分からない。識者の御教授を切に乞うものである。
「鳶尾」原文“iris”。花菖蒲。
「『日本の家庭』四一図」モースの“Japanese homes and their surroundings”から当該図に関わる原文をまず引く。
Anotlier
house shown in fig. 41, was seen on the road to Mororan, in Yezo. Here the
smoke-outlet was in the form of a low supplementary structure on the ridge. The
ridge itself was flat, and upon it grew a luxuriant mass of lilies. This roof
was unusually large and capacious.
FIG.
14 ― HOUSE NEAR MORORAN, YEZO
また、私の所持する八坂書房一九九一年刊の斎藤正二・藤本周一訳になるモースの「日本人のすまい」から図(上図)及び当該箇所の訳部分のみを本書の叙述と比較対照する用に供するためにも掲げさせて戴く(「Mororan」の右にママ注記があるが省略した)。
《引用開始》
四一図に示したいま一つの家は、蝦夷の室蘭Mororan に通じる道路沿いにあったものである。この場合、煙ぬきは、棟の中央部に小さな棟を補助的に重ねたかたちになっている。棟自体は平らになっていて、そこにかなりの数の百合が生えている。この屋根は、大きくて広々とした点では稀に見るものであった。
《引用終了》]
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