杉田久女句集 249 花衣 ⅩⅦ 菊
菊花摘む新種の名づけたのまれて
菊摘むや廣壽の月といふ新種
[やぶちゃん注:「廣壽の月」というもしかすると久女が名づけたかも知れない菊の品種、御存じの方がいたら、是非、お教え下さい。]
菊摘むや群れ伏す花をもたげつゝ
摘み移る日かげあまねし菊畠
添竹をはづし歩むや菊も末
菊干すや東籬の菊も摘みそへて
菊干すや日和つゞきの菊ケ丘
菊干すや何時まで褪せぬ花の色
日當りてうす紫の菊筵
今日はまた白菊ばかり干しひろげ
緣の日のふたたび嬉し菊日和
朝な朝な掃き出す塵も菊の屑
大輪のかわきおそさよ菊筵
今年ゐて菊咲く頃の我家かな
門邊より咲き伏す菊の小家かな
ひろげ干す菊かんばしく南緣
愛藏す東籬の詩あり菊枕
ちなみぬふ陶淵明の菊枕
白妙の菊の枕をぬひ上げし
ぬひあげて菊の枕のかほるなり
[やぶちゃん注:私の電子テクスト杉田久女の随筆「菊枕」も参照されたい。]