杉田久女句集 252 花衣 ⅩⅩ
嚴寒や夜の間に萎えし卓の花
如月の雲嚴めしくラヂオ塔
ほのゆるゝ閨のとばりは隙間風
眉引も四十路となりし初鏡
たらちねに送る頭巾を縫ひにけり
遊學の旅にゆく娘の布團とぢ
かざす手の珠美くしや塗火鉢
筆とればわれも王なり塗火鉢
ひとり居も淋しからざる火鉢かな
銀屛の夕べ明りにひそと居し
色褪せしコートなれども好み着る
句會にも着つゝなれにし古コート
アイロンをあてゝ着なせり古コート
身にまとふ黒きショールも古りにけり
鶺鴒に障子洗ひのなほ去らず
かき馴らす鹽田ひろし夕千鳥
首に捲く銀狐は愛し手を垂るゝ
牡蠣舟や障子のひまの雨の橋
君來るや草家の石蕗も咲き初めて
そののちの旅便りよし石蕗日和
[やぶちゃん注:「石蕗日和」は「つはびより」で石蕗(つわぶき:キク亜綱キク目キク科キク亜科ツワブキ
Farfugium japonicum )の花の映える好天をいう。ツワブキは晩秋から初冬にかけて咲くから、小春日和と同義で冬の季語である。]
冬ごもる簷端を雨にとはれけり
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