杉田久女句集 248 花衣 ⅩⅥ 門弟をつれて 二句
門弟をつれて 二句
邸内の木の實の宮に歩みつれ
木の實降るほとりの宮に君とあり
[やぶちゃん注:本句は角川書店昭和四四(一九六九)年刊「杉田久女句集」では『〈昭和四年――昭和十年〉(創作年月未詳)』のパートにあり、同定のヒントもないが、わざわざ「邸内」と言い、その屋敷内に個人的な「宮」(祠)が存在するということになると、私はあの広大な櫓山荘を直ちに想起してしまう。当時の櫓山荘にそうしたお社が存在したかどうかは分からないが、現在の櫓山荘跡の写真を見る限り、「木の實」降るような鬱蒼とした木々の叢の中の社があっても何らおかしくない印象を受ける(寧ろ、幕藩時代の堺鼻、小倉藩の見張番所跡という地形から見ても、海神などを祀るに相応しい所であるように私には思われる)。但し、「門弟をつれて」と前書きしてその門弟の「邸内」というのはやや奇異な印象を受けるものではある。私の誤釈かも知れない。なお、少なくとも二句目の「木の實」は底本の索引から「このみ」ではなく「きのみ」と読んでいることが分かる。]