うちのしろ 山之口貘
うちのしろ
わんわん わんわん
わんわん ほえるのが
わんわんくんの
やくめだ
わんわん わんわん
しろが ほえたてた
でっかい トラックに
ほえたてた
わんわん わんわん
わんわん ほえるのが
わんわんくんの
やくめだ
わんわん わんわん
しろが ほえたてた
みみずが うごいたら
ほえたてた
[やぶちゃん注:初出は昭和三八(一九六三)年二月発行の『児童ブック ことり』(東京都渋谷区上通(かみどおり)の国際情報社発行)。現在、砕身の思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」の「既刊詩集未収録詩篇」の中で最も新しい、則ち、最後のバクさんの詩である。「鮪に鰯」の冒頭と二番目にある「ひそかた対決」(昭和三八(一九六三)年三月号『小説新潮』初出)]と「弾を浴びた島」(昭和三八(一九六三)年三月号『文藝春秋』初出)の直前、三番目にある「桃の花」(昭和三八(一九六三)年二月二十一日附『家庭信販』初出)と同時期か若しくは先の発行になり、これら、現存するバクさんの最後の詩篇群の一篇である。]