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2014/07/05

まひる   山之口貘

 まひる

 

乾燥した城址の裏路の日向

クロバイの汚みた白い服があらはれ

苦熱のまんなかにあらはれ

サーベルの音が蠟のやうに溶け

私のまつげには

輕蔑と憎惡(にくし)みとがぶらさがり

 

さて――

嗜眠性腦炎に侵された太陽の看護には

とろ とろ 飽いて

横走る蟹のやうに

四辻の

交番にばつたり突きあたつたのが

足の太い

年増の女だ。

 

[やぶちゃん注:初出は大正一四(一九二五)年九月号『沖繩教育』(同誌は沖繩縣教育事務所発行)で、掲載誌の目次は「詩二篇」とあって前の「人生と食後」とともに掲載されている。ペン・ネームは山之口貘。推定するにこの二篇が二度目の上京前後のこの時期の現存する沖繩のメディアへの最後の投稿詩であると思われる。バクさん、二十二歳。

「嗜眠性腦炎」嗜眠(意識障害の内でも最も強い昏睡に次ぐ状態)を主症状とする脳炎。エコノモ型脳炎とも呼ぶ。第一次大戦後ウィーンに流行して日本にも一時的に局地的流行をきたしたが、その後みられない。エコノモ脳炎(Encephalitis lethargica)、A型脳炎とも呼ぶと平凡社「マイペディア」にはある。ウィルス性脳炎の一種ともされるが、現在は症例が極めて稀だとする不思議な病気である(ウィルス自体が変異若しくは何らかの理由で壊滅的に減少したか。以下に見るようにパーキンソン症候群などの病態の特徴的一例をとして今は示されてある。ある種の部分の免疫力低下による本来は殆んど無害なウィルスによる発症なのか)。それでもそう診断告知レノブログがあるから、もしもウィルスならば当該のそれは必ずしも絶滅しているとは言えない。その方の医師による告知記載によれば(改行の一部を省略し、記号を一部追加した)、『精神障害(興奮・強迫症)・睡眠障害(不眠・傾眠傾向)・錐体外路運動障害(不随運動・パーキンソニズム)』(パーキンソン病及び同様の病態を指す語)『を起こす脳炎』で、『欧米では小児を中心に報告されている』が、『日本では報告が無い』。『不随意運動、睡眠障害・意識障害』を主症状とするが、『嗜眠性脳炎という名前からはひたすら眠り続けるようなイメージを抱かせるが不随意運動が中心となる dyskinetictype』(主訴を運動障害とするタイプ)『の報告もある』。『意識障害(開眼しているけれど反応が無い)抗NMDA-R抗体(N-methyl-D-aspartate receptor)陽性例が多い。これは若年女性に見られる卵巣奇形種に伴う脳炎の原因となる抗体。陽性例では、不随意運動、興奮、痙攣、不眠が多い。陰性例では、パーキンソニズム、傾眠傾向が多い。治療は、免疫療法が考えられるが、このタイプには概して効きにくいようだ。予後は、成人では急性期にどんなに重症でも後遺症をほとんど残さずに治癒することがあると言われているが、小児例は予後はよくないようだ。小児の20例を報告』(中略)『抗N-メチル-Dアスパラギン酸受容体(NMDAR)脳炎は2007年に daimau らによって提唱された卵巣奇形種関連傍腫瘍性脳炎であり、グルタミン酸(GLu)受容体の一つであるNMDARのNR1/NR2ヘテロマーに対する抗体(抗NMDAR抗体)を介して生じる自己免疫性脳炎である。Dalmauらの研究グループは、この脳炎を複数報告し、若年女性に好発し、精神症状、痙攣、記憶障害、蔓延性意識障害、顔や手の不随意運動、自律神経障害を呈する特徴があると述べている。2009年』に『小児の20例の嗜眠性脳炎』が報告されているが、『そのうち半数が抗NMDAR抗体陽性であることを、確認した』とある。『症状の特徴は、不随意運動(急性期:ヒョレア・ジストニア・バリズム・常同運動・口唇ジスキネジア・oculogytic crises:眼球の上方回転発作。)・(慢性期パーキンソニズム)と睡眠障害(不眠と睡眠逆転が主で傾眠傾向は少ない)・意識障害で、その半数は痙攣もみられ』るとある(これらから見るとウィルスではなく遺伝的な特異な感受性が疑われる。しかしだとすると「第一次大戦後ウィーンに流行して日本にも一時的に局地的流行をきたした」という公的な辞書の記載は極めて奇異に感じられ、同様の病態を引き起こす全く別の感染性脳炎疾患であった可能性が疑われるように私には思われる)。最後にレノ氏の快癒を心より祈るものである。]

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