沖縄島 山之口貘
沖縄島
累々たる屍を踏んづけたりもしたのだが
死人の罰などはなにひとつも
あたらなかつたとおもつてゐるわけなので
宗教なんてのが影をひそめてゐるのだと
島から来た博士はそのやうに云つて
お寺なんかもなくなつたと云つた。
[やぶちゃん注:初出は昭和二五(一九五〇)年五月号『人間』(目黒書店発行)で、詩集「鮪に鰯」所収の「桃の木」(初出・昭和二三(一九四八)年二月号『改造』)とあわせて掲載された。この詩の原稿も「鮪に鰯」編纂用詩篇の束の中にあるので、収録する予定であった可能性がある(実際には採用していない)。
「島から来た博士」この人物は沖繩出身者であり、博士号を持ち、占領下の沖縄から戦後に上京した人物でなくてはならないのだが、不詳。識者の御教授を乞う。]