正月の朝 山之口貘
正月の朝
みんなして にこにこ
お正月の朝だ
おじいさんも元気でうれしそう
おとそをのんで赤い顔して
おぞうにのおかわりをぺろりたいらげて
「さあまた こんねんも一つづつ
みんなの年がふえたわい」といった
ところがそれはかぞえ年なので
むかしのお正月のならわしなのだが
いまはあいにくとみんな
満で年をかぞえるのだ
三月生まれのミミコもにこにこ
「十年と九か月ちょっとだわ」といった
すると おじいさんが「おやおや
九か月ちょっとのはんぱなんだ
年にもおまけが
あるのかい!」とにこにこ
[やぶちゃん注:「一つづつ」はママ。初出は昭和三一(一九五六)年新年特大号「小学五年生」。ミミコ(泉)さんは昭和一九(一九四四)年三月生まれであるから、発表当時は十一歳と九ヶ月である。従ってこれはシチュエーションとしては実に正しく前年昭和三十年のお正月の景であることを表わしている。バクさんは満五十一歳、登場するおじいさんは妻静江さんの父であろう。バクさんの父重珍は昭和二八(一九五三)年四月、遙か日本の南端の与那国島で既に亡くなっている。]
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