橋本多佳子句集「紅絲」 北を見る
北を見る
いなびかり遅れて沼の光りけり
いなびかり北よりすれば北を見る
地(つち)の窪すぐにあふるゝいなびかり
わが行方いなづましては闢きけり
いなづまの触れざりしかば覚めまじを
双の掌をこぼれて了ふいなびかり
いなづまのあとにて衿をかきあはす
いなびかりひとの言葉の切れ切れて
いなづまの息つく間なし妬心もつ
燈の消えて野にあるごときいなびかり
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