キカンシャ 山之口貘
キカンシャ
オトナノ
キカンシヤ
オオキナ
オカオ ダ
ハコニ
イツパイ
ミンナヲ ノセテ
ツヨイ
チカラ ダ
オトナノ
キカンシヤ
テツノ
オカオ ダ
オオキナ
オカオ ダ
[やぶちゃん注:初出は昭和二二(一九四七)年六月号『こどものまど』。バクさんの現在知られる既刊詩集未収録詩篇の中で戦後最初の詩篇である。この前の二篇が同じ児童詩で、しかもあからさまな戦意高揚詩であったことを考える時、この「ミンナヲ ノセ」て強力に牽引する心強い鉄の塊のエクスタシーのバク進は、ゼロ戦と落下傘を轢き潰し轢き裂く、バクさん自身の解放であると同時に、バクさんの詩人としての孤独な秘かな禊ぎででもあったのかも知れない。
本詩発掘の経緯については既に二〇一〇年十月二十五日附『琉球新報』記事を二〇一四年二月二十六日附の私のブログに記して、同記事内の同詩全篇も掲げてあるが、今回、思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と校合(異同なし)した。]