橋本多佳子句集「紅絲」 祭笛(Ⅰ)
祭笛
戦後はじめて京都祇園祭を観る
ゆくもまたかへるも祇園囃子の中
われもまたゆきてまぎれん祇園囃子の中
髪白く笛息ふかき祭(まつり)びと
鉾囃子(ほこばやし)高くくらきに笛吹く群れ
祭笛吹くとき男佳(よ)かりける
祭笛うしろ姿のひた吹ける
[やぶちゃん注:この句について、私の『鈴木しづ子 三十二歳 昭和26(1951)年8月24日附句稿69句から32句及び「樹海」昭和26(1951)年10月号発表句3句』の「遠花火音より早く失せにけり」注の鈴木しづ子の「祭笛」の句二句、
祭笛吹き了りなば情ささげむ
祭笛ふくとき若さ恥ぢにけり
についての私の解釈部分を是非お読み戴きたい。]
生き堪へて身に沁むばかり藍浴衣
堪ゆることばかり朝顔日々に紺
泣きたけれど朝顔の紺破るべし
あさがほが紺折りたゝむひらく前