杉田久女句集 264 花衣 ⅩⅩⅩⅡ 長女昌子を詠む 八句
昭和七年昌子東上 五句
春寒の毛布敷きやる夜汽車かな
いつくしむ雛とも別れ草枕
寮住のさみしき娘かな雛まつる
健やかにまします子娘等の雛祭
寢返りて埃の雛を見やりけり
昌子よりしきりに手紙來る 三句
春愁の子の文長し憂へよむ
望郷の子のおきふしも花の雨
春愁癒えて子よすこやかによく眠れ
[やぶちゃん注:底本年譜によれば、昭和七(一九三二)年の八月、長女昌子(当月で満二十一歳)は横浜税関監視部長中村重善氏夫妻の世話で同税関長官房文書係雇として就職した。久女四十二歳であった。]
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