今日のシンクロニティ「奥の細道」の旅 51 象潟 汐越や鶴はぎぬれて海涼し
本日二〇一四年八月 二日(陰暦では二〇一四年七月七日)
元禄二年六月十七日
はグレゴリオ暦では
一六八九年八月 二日
である。【その三】汐越の句。
汐越(しほごし)や鶴はぎぬれて海涼し
腰長(タケ)の汐といふ處はいと淺くて、
鶴をり立(たち)てあさるを
腰長や鶴脛(はぎ)ぬれて海涼し
[やぶちゃん注:第一句目は「奥の細道」の句形。
第二句目は「ねぶの雪」の句形。「曾良俳諧書留」にも、
腰長汐(こしたけのしほ)
という前書でこの句形で載るから、こちらが初案であった。「腰長」は腰丈で、地名の汐越と同様、入海の潮の入り来る腰位ほどの浅瀬のことをいう一般名詞から転じたものであろう。夏場でもあり、嘱目吟の可能性は薄いと思われるが、博物誌に詳しい安東次男氏は『タンチョウなら、ひょっとして象潟辺でも夏場に棲んでいたかも知れぬ』と留保されている。安東氏は既に「松島 嶋々や千々にくだけて夏の海」で引用した通り、『じつはもう一つ大切な見どころがある。象潟(芭蕉)の「鶴脛」は、松島(曾良)の「鶴に身をかれ(ほととぎす)」の写しだというのが何ともしゃれた、同行俳諧である。こういうところを見落す俳諧紀行は無意味になる』と述べておられる(太字は底本では傍点「ヽ」)。例によって険のある安東節乍ら、私も松島の段で述べた如く、昔からこの鏡像関係に強く惹きつけられてきただけに、激しく共感するものであり、安東氏ではないが、この眼目をこの句で語らない評者は「奥の細道」が分かっていないと言いたくなるのである。]
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