橋本多佳子句集「海彦」 老いまでの日の
老いまでの日の
上京して
衣更前もうしろも風に満ち
衣更老いまでの日の永きかな
駅燈に照らされて巣の燕寝し
武蔵野の三谷昭氏新居を訪ひて
旅のひざ仔猫三つの重さぬくさ
[やぶちゃん注:三谷昭(明治四四(一九一一)年~昭和五三(一九七八)年)は俳人。素人社や実業之日本社などで編集者を勤める傍ら、『走馬灯』『京大俳句』などに加わり、昭和一五(一九四〇)年の京大俳句事件で検挙された。戦後は『天狼』『面』同人。現代俳句協会初代会長。多佳子より十二歳年下である(講談社「日本人名大辞典」に拠った)。句を掲げる。
ある街の木瓜の肉色頭を去らず
わが一生女はいつも野火に似て
暗がりに檸檬泛かぶは死後の景]
単衣着て足に夕日のさしゐたり
蓮散華美しきものまた壊る
飛燕の下母牛に乳溜まりつゝ
嫗の身風に単衣のふくらみがち
[やぶちゃん注:順列と季語から見て、昭和二八(一九五三)年の夏の句。当時、多佳子五十四。]
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