生物學講話 丘淺次郎 第十一章 雌雄の別 三 局部の別 (2) 驚きのファルス群!
蛇・「とかげ」の類も平常は雄の交接器が現れて居ぬから、雌雄の形が違わぬやうに見えるが、實は肛門内に立派な交接器を具へて居る。しかもそれが左右兩側に各々一つづつある。雄の蛇を捕へてその腹を強く締めると、肛門から一對の突起がでるが、これを見て足と思ひ誤り、蛇にも足があるとか、足のある蛇を發見したとかいふことが屢々ある。先年も或る新聞紙に奇蛇と題して、埼玉縣の或る村で一對の足を具へた蛇を捕へた。その足には各三十六本の爪が生えてあつたといふ記事が出て居たが、これは無論雄蛇の交接器で、爪といふのはその表面にある角質の尖つた突起に違ない。左右一對あつて位置も腰のところに當るから、素人がこれを足かと思ふのも無理ではないが、實は交接するとき雌の體内に插し入れる部分である。龜の類も雄には大きな交接器があつて、交接のときにはこれを長い間、雌の體内に插し入れているが、常には肛門内に收めて居る故、外からは少しも見えぬ。
[やぶちゃん注:ヘビやトカゲの仲間である有隣目の♂の生殖器は普通は尾の付け根にあって、哺乳類その他のペニスと異なり、左右一対であることから、特にヘミペニス(半陰茎)と呼ばれる特異なものであり、また、蛇の交尾は一般に非常に長いことでも知られる。私は蛇好きであるが、成体のヘミペニスは見たことがない。個人サイト「ニッポンの歩き方」の群馬県にある「ジャパンスネークセンター」訪問のページで、ハブのヘミペニスの液浸標本画像や分かり易くイラスト化したヘミペニスの構造が分かる。また、喪主ちん氏のサイト「ちん.com」内の「萌える民俗学」ではモノクローム写真ながら、二十六時間に及ぶ交尾行動の写真が見られる。特に♂♀が完璧に捻じり合った状態(ちん氏は『中尾彬のネジネジのようだ』とキャプションを附けておられ、まことに言い得て妙)が素晴らしい。特に『この交尾の姿を模して縄文土器やしめ縄がつくられたらしい』『模すことにより何をあやかるつもりなのかよくわか』らないながらも、『一説によれば、生命力を崇めている』とあり、注連繩もこれが元という説を示されてあって、実に目から正真正銘、鱗であった。
亀のペニスは「え!カメのおちんちんってこんな形!? YouTube動画で学ぶ動物のペニスの不思議」が絶品である。ここでは亀以外にも、先の蛇の他、犬・猫・海象(セイウチ)・針土竜(ハリモグラ)・蝙蝠・蝸牛・鯨といった生物のペニスの動画が見られる。亀のその巨大さにはちょっと驚いた。生理的嫌悪感を持たない方には必見である。]
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