橋本多佳子句集「海彦」 吉野青し
吉野青し
急流を泳ぎ切り若き全身見す
青き吉野泳ぐ百姓淵に透き
尻あげて泳ぎ吉野の川に育つ
吉野青し泳ぐとぬぎし草刈女
泉の底明し顔浸(つ)け眼ひらけば
待つ長し電線つかみ仔燕等
(二十八年)
[やぶちゃん注:「吉野」は奈良の吉野。「吉野の川」は奈良県から和歌山県へと流れて紀伊水道に注ぐ紀の川。河川法上の名称は「紀の川」で、国土地理院二万五千/一地形図では「紀ノ川」、奈良県内では奈良県南部の地名「吉野」に因んで「吉野川)」と呼ばれるが、河川名を案内する標識などには水系名である「紀ノ川」が併記されてある(以上はウィキの「紀の川」に拠る)。底本年譜の昭和二八(一九五三)年の条に、『七月三十日、吉野へ吟行、静塔、多佳子、清子』(津田)、『美代子、薫』(堀内)『参加。多佳子は吉野川の青淵』(和歌山県新宮市から奈良県吉野郡十津川村に跨る峡谷瀞八丁(どろはっちょう)か? 十津川村観光協会公式サイト内の「瀞峡」を参照)『をのぞき込んだり、大岩に腰かけて句作にふける。雷雨の中、静塔は濡れて着く。下市』(しもいち:奈良県吉野郡下市町大字下市)『の「吉野山水」』(奈良県吉野郡十津川村平谷にある離れ一軒宿。現在は「小料理宿 山水」と称する。十津川温泉の源泉地下湯温泉にあり、本年で創業三十五年の和風旅館。公式サイトはこちら)『にて夜、土地の俳人等を交えて句会。夜中、泥棒入り大騒ぎ。翌三十一日、未明に起き、鮎釣を觀。午前中句会。作品「吉野青し」。』とある。]
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