今日のシンクロニティ「奥の細道」の旅 73 湯の名残今宵は肌の寒からむ ――タドジオとの別れ――
本日二〇一四年九月 十八日(陰暦では二〇一四年八月二十五日)
元禄二年八月 五日
はグレゴリオ暦では
一六八九年九月 十八日
【その二】「その一」で述べたように、この日、芭蕉は八日間滞在した山中和泉屋を発った。本句は、その十三歳の若主人で門人となった久米之助桃妖への留別吟である。
湯の名殘(なごり)今宵(こよひ)は肌の寒からむ
山中湯上(ゆあが)りにて桃妖に別るゝ時
湯の名殘今宵は肌の寒からぬ
[やぶちゃん注:第一句目は句空の「柞原(ははそはら)集」(元禄五年奥書)の句形で、
此句ハ、はせを翁山中上湯の時、やどりの
あるじ桃妖に書てたぶ。まへがきありしか
どわすれ侍り
という附記がある。「上湯」や次の句の前書の「湯上り」はともに湯治明けのこと。第二句目は「立圃花めぐり」(岸芷(がいし)編・文化五(一八〇八)年刊)の句形。「今宵」の「宵」は底本(岩波文庫版中村俊定校注「芭蕉俳句集」)では「※」=「雨」(かんむり)+「月」。
温みが今宵まで持つか持たぬか、それぞれに解釈は可能であるが、これは湯ではなく美少年の肌のぬくもりを通わせる確信犯の稚児愛憐、クナーベン・リーベの恋句であるから、断然、その肌へに触れることが最早出来ぬ今宵は「どんなにか寒いことであろうよ」という第一句でなくてはならぬ。
こりゃ、やっぱ、ヤバいよねぇ、曾良さん……]
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