杉田久女句集 281 花衣 L 「飛鳥みち」「大和橘寺の鐘樓初見」 二句
飛鳥みち
稻架の飛鳥みちなり語りつゝ
[やぶちゃん注:「稻架」は「いねかけ/いなかけ」と素直に読んでいるようである。稲架は「はさ」「はざ」(挟むの意)とも読んで秋の季語である。]
大和橘寺の鐘樓所見
つらね干す簷の橘まだ靑く
[やぶちゃん注:「橘寺」(たちばなでら)は奈良県高市郡明日香村にある天台宗寺院。正式には「仏頭山上宮皇院菩提寺」と称し、本尊は聖徳太子・如意輪観音。橘寺という名は垂仁天皇の命により不老不死の果物を取りに行った田道間守(たぢまもり)が持ち帰った橘の実を植えたことに由来する。『橘寺の付近には聖徳太子が誕生したとされる場所があり、寺院は聖徳太子建立七大寺の』一つとされている。『太子が父用明天皇の別宮を寺に改めたのが始まりと伝わる。史実としては、橘寺の創建年代は不明で』。「日本書紀」天武天皇九(六八〇)年四月の条に、『「橘寺尼房失火、以焚十房」(橘寺の尼房で火災があり、十房を焼いた)とあるのが文献上の初見である』。『皇族・貴族の庇護を受けて栄えたが、鎌倉期以降は徐々に衰え』、現存する建物は江戸期に徐々に再建されたものである(ウィキの「橘寺」に拠る)。]