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2014/09/10

生物學講話 丘淺次郎 第十一章 雌雄の別 四 外觀の別 (1)

     四 外觀の別

Mtamagokani

[卵をつけた「かに」]

 

[やぶちゃん注:底本よりも細部が確認出来る、国立国会図書館蔵の原本(同図書館「近代デジタルライブラリー」内)の画像からトリミングし、補正をした。謂わずもがなであるが、右下のひっくり返った個体の抱卵しているのがよく分かる。]

 

 動物の中には、雌雄の色、形などが著しく違うて、そのため遠方からでも容易に性の識別の出來るものが尠くない。獸類では鹿・獅子、鳥類では「くじやく」・雞などが最も人に知られた例であるが、他の類からもこれに似た例を幾らも擧げることが出來る。しかしてかやうなものを集めて通覽すると、雌雄の異なる點が生殖の作用と直接に關係する場合としからざる場合とがあつて、相違の最も著しいものは却つて交接とは直接關係せぬ方面に多い。鹿の角、「くじやく」の尾などはすべてこの部に屬する。

[やぶちゃん注:ここで丘先生が最後に指摘されておられのは、直接の物理的な狭義の交尾行為に限定したもので、所謂、求愛ディスプレイを含めずに述べておられるのであるが、果たしてそれを「相違の最も著しいものは却つて交接とは直接關係せぬ方面に多い」と言い得るのであろうか? 求愛ディスプレイは成功すれば交尾ディスプレイに直ちに移行し、そこでは視覚的なその有意差が交接の完遂に非常に重要な役割を果たすと私は考えるのだが?]

 

 生殖の作用に稍々直接の關係を有する器官が、雌雄によつて著しく相違する例を擧げれば次の如きものがある。淡水に産する「みぢんこ」類を取つて廓大して見るに、雄の顏の前面には嗅感器なる鼻の毛が束を成して長く突き出て居るが、雌ではこれが極めて短いから、鼻の毛の突出する程度を見れば雌雄は直に識別が出來る。いふまでもなく、雄は嗅覺によつて雌の居るところを知りこれに近づくのである。「ひげこめつき」といふ甲蟲もこれと同樣で、雄の觸角が櫛狀を成して著しく立派であるから、鬚さへ見れば雌か雄かは直にわかる。池や沼に住む「げんごらう」といふ甲蟲は、雄の前足は吸盤があつて幅が廣いが雌のは細いから、この點で直に雌雄の識別が出來る。雄はこの吸盤を用ゐて雌の背面に吸ひ著き、體を離さぬやうにする。「きりぎりす」・「くつわむし」の類では雌の體の後端からは長い産卵管が突出し、雄にはこれがないから子供でもその雌雄を知つて居る。「かに」の腹部は前へ折れて體の裏面に密著して居るが、これを俗に「かにの褌」といふ處で、雄は褌の幅が狹く、雌は褌の幅が廣いから、褌の幅さへ見れば「かに」の雌雄は誰にでもわかる。「かに」は卵を産むと、これを體と褌との間に挾み孵化するまで離さぬが、雌の褌の幅の廣いのはそのために都合が宜しい。かやうな雌雄の相違は、或は雌に近づくため或は雌を離さぬため、或は卵を産むため、或は卵を保護するためで、皆生殖の作用と直接關係あるものばかりである。

[やぶちゃん注:「嗅感器」この呼称は現在、用いられていない模様である。というより、ミジンコの有性生殖についての記載はすこぶる少ない(以前に注で述べたように通常のライフ・サイクルでは無性生殖の方が一般的なせいもあるが)。現在、この器官の名称と機能、及び雄による雌の具体的な探索行動(有性生殖のために雄が出現するのにフェロモンが関係している以上、この「嗅感器」もそれを探知するものと思われるのだが)について、識者の御教授を乞うものである。

「ひげこめつき」鞘翅(コウチュウ)目カブトムシ亜目コメツキムシ上科コメツキムシ科ヒゲコメツキ亜科 Pityobiinaeやオオヒゲコメツキ亜科 Oxynopterinae に属するコメツキムシの仲間。オオヒゲコメツキ亜科ヒゲコメツキ Pectocera fortunei の画像はこちらで(和名ヒゲコメツキは、不審であるが、ヒゲコメツキ亜科ヒゲコメツキ属(実際にある)ではなくてオオヒゲコメツキ亜科であるらしい。ややこしい。「なんじゃ、こりゃ!?」――ジーパン刑事風に――)。

「かにの褌」甲殻亜門軟甲(エビ)綱真軟甲亜綱ホンエビ上目十脚(エビ)目抱卵(エビ)亜目短尾(カニ)下目 Brachyura に属するカニ類の腹節とそれに続く尾節部分の通称。カニ類ではエビ・ヤドカリ類と異なり、腹部の筋肉が発達せず小さくなって、アサヒガニ等の一部の分類群を除くと頭胸甲の下側に折り畳まれ、有意な運動器官としての尾部先端の尾扇も形成されず、腹肢も交尾と幼生を孵化させる際以外には動かされることはない。それが褌のように見えることからかく呼称する。ここで述べられているように、♂では腹部は幅が狭く、ここに一対の交尾器(腹肢が変形したもの。♂の腹肢は第一節と第二節のみが残る)あるのに対し、♀の腹部は必ず抱卵するために幅が広くなっており、卵を保持支持するために腹脚は第二節から第五節に四対あって内枝外枝が発達し、毛が密生して卵の附着保護に適応している。丘先生の言うようにカニ類の性識別はこの褌と腹肢の有意な違いによって極めて容易である。]

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