『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より金澤の部 稱名寺(Ⅲ)
境内(けいない)には。ふるくより靑葉楓樹、西湖梅、櫻梅、幷に普賢文殊の兩樹あり。今は枯れ或は存(そん)し。住僧に問ふにあらされは知る能はず。左に名所圖會に載する所を錄して。其の香影を傳ふ。
[やぶちゃん注:「靑葉楓樹、西湖梅、櫻梅、幷に普賢文殊の兩樹」と五つを挙げているが、黒梅が抜けている。これら六木が金沢八名木の中の六種である(原木は現在、総て枯れている)。横浜市公式サイト内の「金沢の四石・七井・八名木」の解説を以下に引いておく(表形式であるので「*」で分割した。残りの三木(名数の8番目に別説があるので四木)も併せて載せた)。
《引用開始》
青葉楓
称名寺本堂前阿字ヶ池のほとりにあって冬でも紅葉しない楓として伝えられていました。金沢ゆかりの能「六浦」はこの楓に由来します。境内に長らくありませんでしたが、第12回称名寺薪能の当日に植樹されました。
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西湖梅
北条実時が、中国の杭州西湖から取り寄せたと言われています。昭和20年頃まで称名寺に古木がありました。区制60周年記念事業として泥亀公園に植樹されました。
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黒梅 桜梅
「名所和歌物語」に「この両木称名寺にあり。ただし今絶えてなし」とありどの木か不明です。区制60周年記念事業として泥亀公園に桜梅が植えられています。
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文珠桜 普賢象の桜
称名寺にあった八重桜の一種と言われています。文珠桜は左近の桜になぞらえて階前の金堂の左に、普賢象の桜は右近の橘になぞらえて階前の金堂の左にありました。
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蛇混柏
瀬戸神社境内にあった柏槇のことで、延宝8年(1680)大風で立ち枯れてしまいました。現在その太い幹が境内に横たわっています。
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8番目の名木 一つ松
室の木の追浜近く景勝地の「雀が浦」にありました。別に一葉松とも呼ばれていました。
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8番目の名木三本杉
瀬戸神社、蛇混柏の南にあり、この三本杉が金沢ゆかりの能「放下僧」の舞台となりました。
《引用終了》
なお、「新編鎌倉志卷之八」には、
金澤の八木と云て、靑葉の楓・西湖梅(せいこむめ)・黑梅(くろむめ)・櫻梅(さくらむめ)・文殊櫻(もんじゆさくら)・普賢象櫻(ふげんぞうざくら)・蛇混柏(じやびやくしん)・雀浦一松(すゞめがうらのひとつまつ)とてあり。五木は此の處にあり。蛇混柏は、瀨戸の明神にあり。雀浦の一つ松は其の所にあり。黑梅は絶てなし。其跡は爰にあり。
と「八木」の項を設けている(この記載時点で既に黒梅は枯死していたことが分かる)。「鎌倉攬勝考卷之十一附錄」には詳細な記載と西湘桜・桜梅・普賢象桜・青葉楓の図が載るので、図のみここに引用しておく。
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