晩秋 萩原朔太郎
[やぶちゃん注:底本の筑摩版全集第二巻の「習作集第九卷(愛憐詩篇ノート)」より。クレジットはないが、六つ前の詩が「秋思」でその末尾に「九、一四」のクレジットがあり、その間の詩群(直前は「中秋雜詠」という短歌群)は概ね秋を詠む。また「秋思」よりさらに七つ前の「九月上旬の午後」の末尾には「一九一三、九、一〇」とある。翻って、続いて掲げる後の「からたちの垣根」と「偶成」は末尾に「一九一三、一〇、二〇」という同一クレジットを持つ。さらに実はその次に配されてある「晩秋」という短歌群十二首の内容が本詩篇を含み、「からたちの垣根」と「偶成」の三篇と酷似する光景であることが分かる。従って本詩篇も大正二(一九一三)年十月二十日の作と断言してよい。取消線は抹消字を示す。「(停車場の)」は実際には「畠麥畑よりつかれて歸り」と「前橋驛の裏手なる」の行間下にあり、「前橋驛の裏手なる」(全行)又は「前橋驛の」(部分)の別案を示したものと思われる。「たたづめり」はママ。]
晩秋
ああ秋も暮れ行く
このままに
故鄕にて朽つる我にてほよもあらじ
草の根をかみつゝ行くも
のどの渇きをこらへんためぞ
畠麥畑よりつかれて歸り (停車場の)
前橋驛の裏手なる
便所のほとりにたたづめり
日はシグナルにうす赤く
今日の晝餉に何をたうべむ、
(故鄕前橋にて)

