杉田久女句集 296 杉田久女句集未収録作品 Ⅱ
皿の絵に赤くしみつく苺かな
幟ひたと默して暑き街道埃
[やぶちゃん注:「街道埃」は「みちぼこり」と訓じていよう。]
松原に虹美しき幟かな
明日の麥を井にかすや月出でにけり
椀のふたに花柚の香や朝うれし
干瓢干て日盛や連山せまる家
日盛土人葉かげのバナナ切りに入る
夏草を退きためし朝の潮かな
山畑の茄子なり盛る秋涼し
今朝秋や酢の香うせたる櫃の飯
パセリ添へて皿繪美し萩の夕
かけす馴れて婢の名を呼ぶや今朝の秋
[やぶちゃん注:ウィキの「カケス」によれば、スズメ目カラス科カケス Garrulus glandarius は「ジェー、ジェー」としわがれた声で鳴くき、英名“Eurasian jay”の“Jay”はこの鳴き声に由来するとし、また、『他の鳥の鳴き声や物音を真似するのが巧く、林業のチェーンソーや枝打ち、木を倒す時の作業音を「ジェージェー」の間奏を入れつつ再現することもある。飼い鳥として人に慣れたものは人語の真似までする』とある。私は鳥には疎いので吃驚り(私は実はかつて「日本野鳥の会」に属していたが、これは妻の家族会員というのが真相であった)。]
霧の中にボーと鳴る汽笛や默す夫婦
五月振りに家に歸る 一句
妻留守の汚(よごれ)衣ためて秋暑し
秋空の如く瞳のすむ子かな
皿愛でて菊膾する旗日かな
コスモスやとまと切る皿の繪の模樣
婢をまぜて女三人やいもの秋
[やぶちゃん注:「三人」は「みたり」と訓じているか。]
間引菜を浸して寒し桶の水

