今日のシンクロニティ「奥の細道」の旅 97 こもり居て木の實草のみひろはゞや
97本日二〇一四年十月十六日(当年の陰暦では九月二十三日)
元禄二年九月 四日
はグレゴリオ暦では
一六八九年十月十六日
【その二】同日の前句に示した大垣藩家老格戸田権大夫戸田恕水の大垣室町の別荘に招かれての句。「恕水(如水)日記」四日の条にも載る。
恕水(じよすゐ)亭別墅(べつしよ)にて即興
こもり居て木の實草のみひろはゞや
[やぶちゃん注:「後の旅」(如行編・元禄八年刊)。そこではこれに恕水が、
こもり居て木の實草のみひろはゞや
御影(みかげ)たづねん松の戸の月
と付けており、表六句まで続けているが、『家中士中に先約有ㇾ之故、暮時より歸申候』とあって、ここまでで止めたことが分かる(山本健吉「芭蕉全句」に拠る)。「家中士中に先約有ㇾ之」は次の句を参照。芭蕉の側の都合である。
恕水の下屋敷の閑静なさまを言祝いだ一見、外連味のない句柄であるが、私はこの「木の實草のみ」を「ひろ」うて食い、「こもり居」たいという芭蕉は、やはり遁世の伯夷・叔斉への自身の憧憬を孕ませていると見る。どこかこの前後、芭蕉の漠然とした他者に対する――のみならず自己存在に対してすら――何か曰く言い難い幽かな忌避感覚が、彼の身体から匂い出ているように思われてならないのだが。……]
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