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2014/10/01

生物學講話 丘淺次郎 第十一章 雌雄の別 五 極端な例 (2)

Kiseiseikennmijinko

[寄生けんみぢんこ]

[(右)雄 側面から (左)雌 腹面から(い、雄)]

 

 天水桶の中などには「けんみぢんこ」といふ小さな蟲が澤山居るが、この蟲と同じ仲間のもので、他動物に寄生する種類が幾らもある。次頁に圖を掲げたのはかやうな類の中の一種であるが、雌は魚類の鰓の表面に寄生し血を吸うて生きて居る。運動する必要はなく、滋養物は有り餘る處に住んで居るから、體の形狀も著しく變化して、一見した所では殆ど「けんみぢんこ」の類とは思はれぬ。體は肥えて丸くなり、「みぢんこ」類に固有な體の節は全く消え失せ、觸角も足もすべて太く短く、恰も指の如き形になつて居る。かやうな雌の身體を腹面から檢すると、その後端に近い處の生殖器の開き口の傍に、必ず一匹の小さな蟲が吸ひ著いて居るが、これがこの蟲の雄である。雄の方は雌とは違ひ、稍々「けんみぢんこ」らしい形状を具へて居るが、體の内部は殆ど睾丸で充されて居るというても宜しい程で、その役目はたゞ大きな雌と交接して、その卵細胞に受精させるだけである。雌に比べると、身長が僅に十五分の一にも足らぬから、假に雌を普通の大きさの婦人に譬へれば、雄は僅に指の長さほどの小さな男に當から、これなどは全動物中でも、雌雄の相違の最も甚しいものの一つであらう。

[やぶちゃん注:「けんみぢんこ」甲殻亜門顎脚綱橈脚(カイアシ)亜綱 Copepoda の原始前脚下綱 Progymnoplea 及び新カイアシ下綱 Neocopepoda に属する動物の総称。ケンミジンコとかコペポーダとも呼ばれる。多くはプランクトンとして生活する微小な甲殻類であるが、底生のもの、寄生性のもの、陸生のものも存在する(以上はウィキの「カイアシ類」に拠る)。

 さて、この段落で主に語られ、図示されている寄生性のケンミジンコというのは、私は、カイアシ亜綱新カイアシ下綱後脚上ポエキロストム(ツブムシ)目 Philichthyidae 科に属する魚類吸血性のカイアシ類の一種ではないかと推察する。そう推理した理由は「広島大学デジタル博物館 地球で最も繁栄している甲殻類」の「魚類寄生性カイアシ類の寄生方法」の頁にある図9の「 Philichthyidae 科カイアシ類のメス」と題した♀の図(『以上の図はKabata, Z. 1979を元に模写』とある)のそれがかなり本書の「寄生けんみじんこ」の♀のそれと似ているからである。更に、この科名で画像検索して掛かった、ロシア語のサイトのこの一枚の画像であるが、この上下を逆にして傾きを補正すると、より本図に近いことが分かるからである。ただ、それでも細部構造に若干の違いが見られるので、丘先生の掲げられたものは同科かその近縁種であるのかも知れない。「日本海洋データセンター」の分類データベースを見ると、この科の前後には Bomolochidae エラジラミ科・Chondracanthidae ツブムシ科・Ergasilidaeニセエラジラミ科・Splanchnotrophidae ウミウシヤドリ科・Taeniacanthidae ホソエラジラミ科といった如何にも吸血性寄生種であるような和名科名が見出せる。]

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