日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十五章 日本の一と冬 雪
図―497
[やぶちゃん注:底本の図と原本のそれとでは表示角度が異なる(底本では繩の頂点が真中心の頂上にあり、これだとどうもこれでどう雪を掻くんだろうと怪訝に思わせてしまう)。今までのものにもあったが、ここではその違いが大きくイメージを変えているので、原本の角度に補正したものを掲げることにした。]
今年の冬、時々雪嵐があったが、人力車夫は一向雪を気にしないらしく、素足でその中をかけ廻り、立っている時には湯気が彼等のむき出しの足から立ち昇って見える。不思議なことだが、家屋も、夏に於ると同様、あけっぱなしであるらしい。子供達も夏と同様に脚をむき出し、寒さを気にかけず、雪の中で遊んでいる。雪嵐の後では人々が、鋤や板や奇妙な形の木製の鋤を持って現れ、それぞれの店や家の前の道路全面の雪をかき、その雪は道路の横を流れ、通常板で蓋のしてある溝の中へ入れる。図497は一枚の板の末端に繩の輪をつけて取手とした一時的の雪鋤である。雪は湿気を含んでいるので、子供は米国の子供がするのと同じ様に、それをまるめて大きな玉をつくり、また次のようにして大きな玉をつくる競争をする。小さな棒二本を、糸の末端で十文字に結び合わせ、これを湿った雪の中で前後に振り、雪がそれ自身の重さで落ちる迄に、どれ程沢山集め得るかをやって見るのである。
[やぶちゃん注:雪鋤や子供の雪玉製造機は今は見掛けぬものだが、何となくなるほどと思わせる。今度、雪が降ったら、やってみよう。]
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