萩原朔太郎 (短歌三首)
[やぶちゃん注:以下は一九八九年二月刊の筑摩書房版萩原朔太郎全集補巻の「短歌」パートにある既刊全集に洩れた短歌群の内、大正二(一九一三)年九月号『創造』に掲載された三首。]
うすあかりかへらぬ人の戀しさに明けそめて降る雪のはなかさ
はかなかり羽虫のはねの白ろ白ろと光るを見れば夏はすぎけり
[やぶちゃん注:「虫」はママ。「白ろ白ろ」の後半は底本では踊り字「〱」。この一首は底本全集第二巻「習作集第八卷(哀憐詩篇ノート)」に所収する短歌群の一つ、「羽蟲の羽」歌群(最後のクレジットによれば大正二(一九一三)年四月の作でペン・ネームは「街の葉ざくら」)の巻頭にある、
おしなべて羽蟲の羽(はね)のさも白く
ひかるをみれば夏は來にけり
の相似歌である。]
浮寢鳥うつらうつらと夢のごと靑き渚をたどる悲しさ
[やぶちゃん注:「うつらうつら」の後半は底本では踊り字「〱」。この一首は底本全集第二巻「習作集第八卷(哀憐詩篇ノート)」に所収する短歌群の一つ、「うまごやし」歌群(クレジットによれば大正二(一九一三)年四月作)の三首目、
浮寢鳥旅に來りてかくばかり
長き渚をたどる哀しさ
の相似歌である。]
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