詩夢 その他
今朝方、夢の中の書斎で、僕は詩を詠もうとしているのだ――
しかし乍ら、それは「当然と言えば当然の如く」、
兩岸猿聲啼不盡中 歸去来兮(兩岸の猿聲啼住まざるうち 歸らなん いざ)
という、李白の「早發白帝城」(つとに白帝城を發す)と陶淵明の「歸去來辭」の変てこりんのカップリングだったり、
僕のちんたいした玄室に 毎夜僕のゆうれいが出る
朝になると 僕の寢室に 首のない戀人の幽靈がゐる
といった尾形龜之助の詩の噴飯の物真似なのだ――
それを「まことしやかに大真面目に詠んでいる」――そうして――
それを「冷ややかに外部から軽蔑の眼(まなこ)で眺めている自分の意識が感ぜられる」――という夢なのである…………
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実につまらぬ夢乍ら、詩の文句を覚えていたので記す。しかしこの夢の意味はその部分部分がなんとなく覚醒時の今の自分にも腑に落ちるのである。
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その後に見た夢。……
僕はどこかの学校で生物の授業を受けている。
教科書に載るのは不思議な生物(「ゴキブリ」と若い生物教師は呼称しているのだが、解剖しようとするシーンがフラッシュ・バックするシーンがあって、その1mもあろうかという巨大な幼体は――茸のエリンギに蟹の脚が生えているような白々とした奇体な生き物なのであった)を発生させるという実験の説明である――
その方法は、真っ赤な林檎を、二種の薬物を混合した真っ赤な赤色の特殊な液体に一晩漬けるとその幼体が発生生育するというのである――
しかし僕は、たいした罪悪感もなく、二人の教え子カップルとともに教師の指示したのとは別の、やはり二種の薬物[やぶちゃん注:一つは定番のカーミン、もう一つはホウ酸の化合物であった。]を実験台の下で秘かに混合し、それに林檎を浸して学校の更衣室の冷蔵庫の中に秘かに隠す――
ところが翌日、寝坊をして学校に行ってみると、僕らのやった行為が露見し、PTAも総べて呼ばれた一大査問糾弾会が開かれているのであった――
ところが僕はその査問の対象にさえなっていないのである――
そこで僕は物証である実験物を取り出して、それを手に査問会に出るのだが、証人として出ている生物教師がその林檎を割ってみると、中はうっすらとしたピンク色にしか染まっておらず、薬物は何を使ったと質され、その薬品名を答えると、
「そんなものじゃ染まらないし、〈あれ〉[やぶちゃん注:例の奇体な生物。]は発生しないよ。これじゃ、このバイオハザードに匹敵する違法な行為を君が主導したという証拠にはならないね。まるで素人のやることだからね。」
と軽蔑したように笑って林檎を僕に投げ返した……
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この如何にも奇体な夢も実は今、こうして記述しているとやはり、何か頗る腑に落ちるものがあるのである。これは先般、僕がリニューアルした「栗氏千虫譜」の仕儀に対する、僕の中にあるところの、あるアンビバレントな意識の表象であると感じられるからである。エリンギに似たしらじらとした甲殻類というところなんざ、フロイト系の分析医が小躍りしそうじゃないか……♪ふふふ♪

