杉田久女句集 301 杉田久女句集未収録作品 Ⅶ 大正七年(3) 昨春の上京を思出でて 三句
昨春の上京を思出でて 三句
花の旅しばしば下車(おり)て知己をとふ
[やぶちゃん注:「しばしば」の後半は底本では踊り字「〱」。]
父母の老を花に訪はんと旅立てり
爐ふさいで老父母の布團しく淋し
[やぶちゃん注:昨春とあり、年譜を見ると大正六(一九一七)年の条に、『五月、虚子にはじめて会う(目白の里へ上京中、飯島みさ子邸の俳句会にて)。みさ子、かな女、みどり女を知る』とあるのと一致する。この大正七年十二月に実父廉蔵は脳溢血のために享年六十六で亡くなっているが、それよりも前の追想吟である。十一月に廉蔵は重態となって久女上京しているが、句柄からはやはりそれよりも前、この大正六年初春の雰囲気の中での追懐と採る。]
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