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2014/11/17

杉田久女句集 306 杉田久女句集未収録作品 Ⅻ 大正七年(7)

 

大鮎一尾づゝ靑串打つて燒きにけり

 

鼠死に居て氣味わろき井や梅雨に殖えて

 

夏足袋ほすや茄子を支へて竹細し

 

衣紋竹に柿の葉風のつのりけり

 

夏夜人に蓮池ひろく灯を浸す

 

  矢矧川沿岸

 

灯皆消して瀨音に寢るや夏の夜

 

[やぶちゃん注:「矢矧川」「やはぎがは(やはぎがわ)」で、福岡県遠賀郡岡垣町の山中を源流とし、同岡垣町の三里松原(芦屋海岸)で玄界灘に注ぐ川のことと思われる。]

 

起し繪淋し寢ねゐし蒲團積みよせて

 

[やぶちゃん注:「起し繪」建物や樹木などの絵を切り抜いて厚紙で裏打ちし、枠組みの中に立て並べて立体的に構成した、一種のペーパー・クラフト。木版刷りの豊かな彩色がなされたものや、灯火を点ずる仕掛けを施したりしたものもあり、「忠臣蔵」「白浪五人男」「道成寺」などの歌舞伎の舞台や、名所風景などを題材とし、遠近法をも取り入れた江戸時代からある立体の紙玩具である(茶室の設計時などにも利用される)。「立て絵」「立て版古(ばんこ)」とも呼び、大正頃まで流行した。季語としては夏とする。以下、ネットより採句。

 おこし繪に灯をともしけり夕涼み (正岡子規)

 うち並べともし勝たり立版古   (高浜虚子)

 起し繪の男を殺す女かな     (中村草田男)]

 

玻璃の水草白根漲るついりかな

 

  長女病む

 

熱高き子に蔓朝顏の風はげし

 

[やぶちゃん注:長女昌子さん小学一年生の夏である。年譜記載はない。]

 

  入院

 

病兒寢ぬれば我に蠅襲ふ疊哉

 

 次女をよそにあづけ看護する事四日

 

子燕や我になき焦るとあはれなり

 

廣葉雫葉を打つてまた淸水に

 

新涼や黄葉出來そめし小楮

 

[やぶちゃん注:「小楮」「ちさかうぞ(ちさこうぞ)」と読んでいるか。]

 

厨窓にのぞく穗先や箒草

 

くゝりゆるくて瓢正しき形かな

 

梯子かけて瓢のたうき急ぎけり

 

黍に浴めば庭に月噴く泉哉

 

[やぶちゃん注:「浴めば」は「あめば」で「浴む」(マ行上二段動詞)の未然形で、浴びせる、注ぎかけるの謂いであろう。何か、今の私には不思議に心惹かれる句である。]

 

畑厨をめぐれば多し秋の蠅

 

[やぶちゃん注:「畑厨」「はたくり」と読むか。台所の勝手口に隣接した家庭菜園のことか。「畑/厨」ではあるまい。]

 

雞頭に白々と立てぬ厨障子

 

障子まだ張らで夜寒や厨窓

 

丸く寢て犬も夜寒し厨土間

 

葱畑に障子はめたる厨かな

 

竈の灰かきとりかくる冬菜哉

 

笊の目の泥や冬菜をぬき入れて

 

笊いぬいてどこそこ分かつ冬菜哉

 

粉雪散る引窓しめぬ乾鮭に
 
 

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