――芭蕉最期の枕邊にて―― たかうなや雫もよゝの篠の露
たかうなや雫もよゝの篠の露
(たかうなやしづくもよよのさきのつゆ)
――寛文年間(一六六一年~一六七三年)――芭蕉二十代の句と推定――
……これも何とも仄かに……私には、お稚児の匂いが漂うて参ります……芭蕉さま…………
[やぶちゃん注:この句は「源氏物語」の「横笛」の帖で数え二歳の薫が無心に筍を囓るシーン(話主は光)、
……御齒の生ひ出づるに食ひ當てむとて、筍をつと握り持ちて、雫(しづく)もよよと食ひ濡らしたまへば、「いとねぢけたる色好みかな」とて、
憂き節も忘れずながら呉竹の
子は捨て難きものにぞありける
と、率て放ちて、のたまひかくれど、うち笑ひて、何とも思ひたらず、いとそそかしう、這ひ下り騷ぎたまふ。
に基づく。副詞「よよ」(滴り落ちる)には竹であるから、「節々(よよ)」も掛けられてある。]
« ――芭蕉最期の枕邊にて―― 植うる事子のごとくせよ兒櫻 | トップページ | ――芭蕉最期の枕邊にて―― 見るに我も折れるばかりぞ女郎花 »